映画『アレクサンドリア』 ―古代ローマ末期の女性天文学者を描いた作品―【見どころ紹介】

映画アレクサンドリアの見どころ紹介

「アレクサンドリア」という映画をご存知だろうか。2009年(日本では2011年)に公開された、古代ローマ帝国末期を舞台とする歴史映画だ。

主人公は、アレクサンドリアに実在した女性哲学者であり、天文学者のヒュパティア。おそらく日本では、科学史や古代ローマに相当関心がない限り、なじみの薄い人物だろう。

しかしあなたが古代ローマに興味があるなら、ぜひとも見てほしい作品である。古代で稀有な女性天文学者の半生も興味深いが、なにより古代ローマ末期を舞台にする数少ない作品でもあるからだ。

そこで今回は映画「アレクサンドリア(原題はアゴラ)」の見どころを紹介しようと思う。あなたにとって、少しでも参考になれば幸いだ。

なお、作品の内容も多く取り上げるため、ネタバレ厳禁で鑑賞したい方は、今すぐ「アレクサンドリア」をご覧いただくといいだろう。

※タイトルしたの画像は、映画「アレクサンドリア」のDVDパッケージイメージを拝借・加工しています。

映画「アレクサンドリア」のあらすじ

見どころを紹介する前に、まずは映画「アレクサンドリア」のあらすじを、ざっくりと紹介しよう。

冒頭でも書いたとおり、「アレクサンドリア」はエジプトの古代都市アレクサンドリアに生きた、女性哲学者で天文学者でもあるヒュパティアの半生を描いた作品である。

作品自体は二部構成となっている。

第一部

第一部は、ヒュパティアと彼女の教え子たちの交流を軸とし、古来の神々を神々を信奉する学者たちと、新興宗教であるキリスト教徒たちが対立する様子が描かれる。

古代ローマ末期の4世紀末、エジプトの都市アレクサンドリアでは、美貌の女性天文学者ヒュパディアが、キリスト教徒もそうでない者たちも関係なく受け入れ、アレクサンドリア図書館で講義を行う。しかし一歩外へでると、キリスト教徒と古来の神を崇拝する学者の間で、対立が起こっていた。

アレクサンドリア図書館のイメージ
アレクサンドリア図書館
O. Von Corven / Public domain

その対立が頂点を迎えたところで、武器による争いが始まり、圧倒的な数のキリスト教徒たちに追い詰められた学者集団(とヒュパティア)は、図書館の中に立てこもる。果たしてこの争いの決着はどうなるのか・・・というところまで。

第一部ではこのほかにも、若き日のヒュパティアの恋愛模様や、社会制度の矛盾である奴隷、救済を求める貧民たちとキリスト教の結びつきなどを交えて、ストーリーが展開する。

弟子の一人から告白を受けたヒュパティアは、どのような返事をするのか。また、ヒュパティアに密かな恋心を抱く奴隷ダオスは、どんな道を選ぶのかも興味深い。

第二部

学者たちとキリスト教徒たちの対立から数十年後、ヒュパティアの弟子たちはアレクサンドリアやその周辺地域で、社会的要職についていた。

一方父をなくしたヒュパティアは、自らの住処を図書館とし研究を続けていく。彼女は地球を中心として天体が動く天動説に疑問をいだき、地球そのものが動く地動説証明のため、実験や検証を繰り返していた。

そんな中アレクサンドリアでは、またもキリスト教徒とユダヤ教徒との争いが勃発。さらに新しく総司教となったキュリロスと、ヒュパティアの元教え子であるエジプト長官の間にも対立が起こる。

そしてキュリロスは、キリスト教に改宗せず、人々に科学的知識を教えるヒュパティアを魔女だと名言。エジプト長官は、身の危険が迫ったヒュパティアをなんとか助けようとするが、果たしてどうなるのか。またヒュパティアの研究は、実を結ぶのか・・・。

第二部では、彼女の元を巣立っていった弟子たちとの立場を超えた交流や、彼女自身の生き様を描きながら、そして哲学者とは、いや人とはどう生きるべきかを問いかける内容となっている。

それでは私がぜひとも観てほしい、映画「アレクサンドリア」の見どころを、3つご紹介しよう。

映画「アレクサンドリア」の見どころ

【見どころ1】様々な対立と群衆描写

まず見どころの第一は、映画「アレクサンドリア」の時代を再現するために組まれたセットの美しさと、アレクサンドリアの街並みが今そこにあるかのような、たくさんの人々の描写だ。

アレクサンドリアの地図
アレクサンドリアの地図
Friedrich Wilhelm Putzger, nach O. Puchstein in Pauly, Real-Encycl. / Public domain

主人公ヒュパディアや弟子たちと、事件に関わる主要人物がピックアップされるのはもちろんだが、この映画はそのほかにも、「その他大勢」の群衆が争うシーンが多い。

その争いで戦う人々、群れをなして建物を壊すシーン、さらには争いに巻き込まれて被害を受ける一般市民に至るまで、非常に細かな演出が行われている。彼らがいることで、美しく再現されたアレクサンドリアの街並みが、非常にイキイキと見えるのだ。

わたしの見る限りでは、すべて人(エキストラ)が演じているように思える。むしろCGであるなら、これほどまで高い技術で「騙される」ことに、むすろ爽快感すら覚える。

もちろんアレクサンドリアの有名な、ファロスの大灯台やアレクサンドリア図書館(ムセイオン)も出てくるので、舞台としてのアレクサンドリアを楽しみにしている歴史ファンでも、見応えはあるだろう。

【見どころ2】主人公を取り巻く恋愛模様

映画「アレクサンドリア」の主人公は、『美貌の若き』女性科学者(天文学者)である。もちろん世の男性が放っておくわけがない。

この映画の監督アレハンドロ・アメナーバルは、ラブストーリーを得意とするらしい。そのスパイスやエッセンスは、もちろん「アレクサンドリア」でも十分生かされている。

この映画の中で彼女を慕うのは2人。
ひとりはヒュパティア門下生の一人。誰かはここで直接明かすことはしないので、映画鑑賞のお楽しみに取っておくといいだろう。彼はヒュパティアのために、当時の2本の笛を操り音楽をプレゼントする。

しかしその恋は、ヒュパティアのある行動で彼を傷つけてしまい、彼はキリスト教徒との戦いに身を投じてしまう。

もうひとりはヒュパティアの奴隷、ダオス。ダオスは奴隷の身でありながらアストロラーベ(天体模型)を造るほどの知性をもちあわせており、いわばヒュパディア門下生の誰よりも優秀な『弟子』である。

ヒュパティアも、そんな彼を誇りに思っていた。しかしヒュパティアの情は、あくまで奴隷としての情だ。言い方は悪いかもしれないが、非常に頭のいいペットを自慢する主人に例えると、彼女の感情はわかりやすいのではないだろうか。

ダオスはある時、自分が奴隷であることと、ヒュパティアの間にある身分の壁を超えられない決定的な出来事に遭遇する。理性的なヒュパティアでも、社会の身分に囚われて生きていることに絶望したダオスは、理性とは真逆の急進的なキリスト教徒「修道兵士」へと身を投じる事となる。

彼ら2人の恋は実ることはなかったが、その後ヒュパティアと再び運命が交錯し、ラストシーンへと展開する。ラストでとった彼らの選択は、ぜひともあなたの目で確かめていただきたい。

【見どころ3】哲学者ヒュパティアの生き方

見どころの最後は、主人公ヒュパティアの生き様だ。

彼女は女性でありながら、父をも凌駕する知性を持ち合わせており、さらにヒュパティア・サークルとも呼べるアカデミック集団を形成していた。

私はヒュパティアが、日本の吉田松陰とよく似ていると感じる。吉田松陰も若くして松下村塾を(仕方なくではあるが)開き、彼のもとに集まる門下生と、対話を通じて教える姿、そして門下生の中から優秀な人材が育ち、やがて日本を動かす中核となっていくところがそっくりなのだ。

その中心であるヒュパティアは、男女の垣根を超え、彼女の生き方を貫いていくのである。それは、勢力を増し改宗を迫るキリスト教に従順せず、あくまで哲学者として理性的な考えを捨て去らないという、信念をもって生きるということ。

物語後半、ヒュパティアは言う。

私の夢は、宇宙の真理を少しでも解き明かすこと。そうすれば満足して死を迎えることができる

その彼女に対し、ともにいた弟子の一人はこういうのだ。

あなたは普通の女性の生き方では収まらなかったでしょう

男性を愛し、子を成すというのが普通の女性の生き方というのなら、ヒュパティアは「女性的な」生き方を選ぶ人ではなかった。

しかし信念を貫く彼女の生き方が、やがて彼女の行く末を運命づけることとなる。キリスト教徒にとって、宇宙の真理や科学的な言動を人に語ることが、人々をたぶらかす魔女となり、彼女の身を危険にさらしてしまう。

だがそれでも、彼女は自分の生き方を変えない。そして宇宙の真理に到達した当日、彼女は運命の日を迎えることとなる。

レイチェル・ワイズの写真
レイチェル・ワイズ(2018)
Montclair Film / CC BY

ヒュパティアを演じたレイチェル・ワイズの、知性を感じさせる美しさが、主人公の生き様をとても良く際立たせていたように思える。

今回のまとめ

それでは映画「アレクサンドリア」の見どころについて、もう一度おさらいしておこう。

  • 古代ローマのアレクサンドリアを再現したかのような街並みと、そこに住む人々の描写がすばらしい
  • 美貌の主人公を取り巻く恋愛模様が、この映画のすぱいすになっている
  • ヒュパディアの信念を貫く生き様が、現代の私たちの心に響く

地動説の証明など、ややファンタジックな内容はあるものの、古代ローマ末期のアレクサンドリアを再現し、そのなかに主人公ヒュパティアと人々を描いた「アレクサンドリア」は、古代ローマの一時代を知る上でも、参考になるのではないだろうか。

ちなみにU-NEXTであれば、月額1,990円で動画を好きなだけ見ることができるので、その一つとして映画「アレクサンドリア」を見てみるのもいいだろう。なんなら31日間の無料トライアル期間にアレクサンドリアを鑑賞し、その後加入を検討するのもありかと思う。

もちろんAmazon Prime Videoでも鑑賞可能だが、こちらは無料視聴期間を終了しているので、いくらかのレンタル料は必要になる。DVDで見るもよし、動画配信サービスで観るもよし。あなたのお好きな手段で観てほしい。

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