ROME ―古代ローマを舞台にしたHBO製作の本格的歴史ドラマ―

HBO製作TVドラマ ROME

古代ローマを舞台にした海外の映画やドラマ、それも日本で日本語の字幕や吹き替えがあるものは、私の知る限りではあまり多くない。
その中で有名なタイトルの多くはハリウッドで制作された映画で、大げさな表現や、演出のために時代背景を創作した設定が盛り込まれているものもある。

このような映像作品の中、HBO(アメリカのケーブルテレビ放送局)とBBCで共同製作されたドラマ「ROME」は、異彩を放つ存在だ。

前・後編合わせて22話構成でできており、時代はカエサルのガリア戦争終盤からオクタウィアヌス(アウグストゥス)のローマ統一まで。
激動の時代でドラマになりやすい時代(日本で言えば、戦国期が大河ドラマになりやすいのと同じ)だが、主人公が歴史的に有名な人物ではないのだ。
加えて当時のローマ社会の風習や習慣、価値観、風景が、しっかりとした時代考証を通じてドラマの中で描かれているように感じる。

とにかく共和政末期のローマ社会を知るなら、まずこの作品を観ようと思わせるドラマ「ROME」の見どころを、今回は紹介しよう。

なお、ネタバレも含んだ内容なので、

事前情報をいっさい知らずにドラマを観たい!

というあなたは、この記事をそっと閉じ、今すぐAmazon Prime Video で観るか、DVDやBlue-rayなどのメディアでご鑑賞いただきたい。

※タイトル下のイメージは、ドラマ「ROME」 のオープニング画面から拝借しました。

ドラマ「ROME」の見どころ

主人公たちが歴史的な有名人ではない

このドラマの魅力を引き出している要因の一つは、なんと言ってもヴォレヌスとプッロの主人公二人の活躍だろう。
だが彼らは、カエサルやアントニウス、オクタウィアヌスといった歴史的な事件を動かした有名人ではない。

プッロ(左)とヴォレヌス(右)の映像
プッロ(左)とヴォレヌス(右)
ドラマ「ROME」 より

彼らはカエサルの第13軍団に所属する百人隊長と一軍団兵という、政治的権力者から遠い位置にいる庶民だ。

主人公のひとりヴォレヌスは実直で忠義に厚く、昔ながらのローマ気質で堅苦しい性格。
一方もうひとりの主人公プッロは気さくで奔放、腕っぷしはめっぽう強いが喧嘩っ早い。

ドラマの軸の一つは、そんな主人公二人がときに固く手を握り合い、ときに激しくぶつかり合う友情物語だ。
しかし主人公を歴史的事件の主役としないことで、ドラマ「ROME」が単なる歴史の後追いになっていない、独自の魅力を備えている。

ここでは主人公二人の特異な立ち位置により描かれた、ドラマ「ROME」の魅力を何点か書き出してみよう。

主人公の目線で見える庶民の生活

ドラマ「ROME」の魅力の一つが、主人公たちの目線でみる庶民の生活の様子だ。
ヴォレヌスとプッロが関わる人たちを通じて、当時大多数を占めていた一般の人が、ただの背景ではなく、日々のなかで自分たちの生活を守ろうとする姿として生き生きと描きだされている。

例えば、とある事情で主人公の一人ヴォレヌスが精肉を売るシーンがある。
百人隊長を務めたこともあるヴォレヌスは、当然このような「卑しい」仕事にうんざりする。

精肉を売るヴォレヌスとプッロの映像
精肉を売るヴォレヌスとプッロ
ドラマ「ROME」 より

そこに降って湧く事件が、借金取りとそれに追われる貧民の騒動。
お金がなければ顔の一部を削ぐという借金取りを、硬派のヴォレヌスが叩きのめすのだが、そのせいでせっかく軌道にのっていた商売をやめなければならなくなってしまう。

このシーンは、当時ローマの下町で庶民たちがどのように治安を守っていたのか、権力者たちの影響が及ばないところでどのように暮らしていたかが分かるようになっている。

階級による価値観の違い

また元老院階級の人間から奴隷までどのような価値観があったのかを、ヴォレヌスとプッロが色んな人と関わることで「感じる」ように描かれている。
そしてドラマを観る私たちに、彼らの物語を通じてその価値観が自然と入ってくるのも、ドラマ「ROME」にある魅力の一つだろう。

例えば次のシーン。
プッロは自分が拾った奴隷にほのかな恋愛感情を抱き、奴隷身分から解放をして結婚を申し込む場面がある。

奴隷女性に解放を打ち明けるプッロの映像
奴隷女性に解放を打ち明けるプッロ
ドラマ「ROME」 より

プッロは自分を慕う彼女が、当然自分に対して同じような思いを抱き、求婚を喜んでくれると思っていた。
しかし彼女の抱く感情は、奴隷主として優しいプッロに対する主人としての思慕であり、恋愛対象ではなかったのである。

この両者の思い違いは不幸な結果を招くことになるが、奴隷と自由民でどのような感情や考えをもっていたかの相違がわかりやすい場面だろう。

当時の社会制度と行われていた様子

さらにヴォレヌスとプッロは様々な立場を経験するが、彼らのもとで起こる事件を通じて、古代ローマの慣習や文化、政治や経済の仕組みが、実際にどのように行われていたのかも見どころだ。

例えばある事件からプッロが裁判にかけられるシーン。

古代ローマの裁判の映像
古代ローマの裁判シーン
ドラマ「ROME」 より

プッロに弁護人が就くまでの過程や、弁護人と検事兼原告との対話でプッロに判決が下るまでの様子が描かれている。
おそらくこの裁判シーンは野外で行われた青空裁判で、検事兼原告の人物と、民衆たちの声の大きさを反映しているかのような裁判官の判決が下り、当時もこのように公平とは言い難い判決例が多々あったのだろうと思わずにはいられない。

友情を確かめる胸アツストーリー

さて、ドラマの主軸ストーリーである主人公二人の友情物語にも、私の好きなシーンがある。
先ほどの裁判で、プッロが死刑判決が下り多数の剣闘士と戦わされるシーン。

剣闘士と戦うプッロの映像
剣闘士と戦うプッロ
ドラマ「ROME」 より

生きる気力を失ったプッロは、渡された武器も持たず、剣闘士に対して殺されることを望んでいた。
しかし剣闘士たちが彼の所属していた第13軍団を馬鹿にした途端、軍団兵だったころの誇りを取り戻し、剣闘士たちに戦いを挑み次々と倒していく。

しかしついに最後の(そして最強の)剣闘士が現れる頃には、彼は傷だらけになっていて、立ち上がる力さえ残っていなかった。
そこに、処刑の様子を見に来ていたヴォレヌスが乱入し、この最強の剣闘士を打ち破ってプッロを見事に助け出すのである。
私は観ていて胸が熱くなったのを覚えている。

このシーンは、彼らの友情もさることながら、この時代、いかに軍団兵の結束が固かったのかを象徴している場面として描かれているといえるだろう。

主人公二人は実在していた!?

ちなみに主人公の二人、実は架空の人物として設定されたのではなく、カエサルの著作『ガリア戦記』の中で実際に活躍した人物として言及されているのだ!

私もてっきり創作された人物だと思っていたのだが、Twitterでドラマ『ROME』の話をしているときに、戦史大好き@6tr5tA2uHpaqyvK氏とジュンペニウス帝@jumpenius氏から教えていただいた。

また鋼屋@haganeya01氏からは英語版のWikipediaに、彼らについての言及があるとの情報をいただいた。

参考 Rome(TV Series)英語版Wikipedia

このことを知ったときは、仕事中にもかかわらず感動のあまり声をあげそうになってしまったが……。

ガリア戦記に出てくる彼らは、実際どのような人生をたどったのか知る由もないが、制作スタッフの芸の細かさには頭が下がる思いである。

歴史的事件と主人公たちとの絡み方

冒頭で記述したように、ドラマ「ROME」が描かれる時代は、共和政末期から帝政直前の約20年ほどで、重要な歴史的事件が立て続けに起こる時期でもある。

もちろん主人公たち二人の人生に、動乱の影響が色濃く反映されていくわけだが、彼らの人生と権力者たちとの争いが独立した話となっているわけではなく、互いに影響を及ぼし合うようなストーリーとなっているところも、「ROME」の見どころだ。

特にカエサル暗殺までを描く前編では、ポンペイウスとカエサルとの抗争から、カエサルがローマの最高権力者に上り詰めていく段階で、主人公たちの行動が権力者たちの争いの行方を左右したり、決定的瞬間を決めてしまったりといったこともあった。

例えばポンペイウスがローマから一時的に退却を決めるシーン。

国庫から金を持ち出すポンペイウス軍の映像
国庫から金を持ち出すポンペイウス軍
ドラマ「ROME」 より

ポンペイウスは兵士たちの給料や物資調達のため、国庫から資金を持ち出すよう画策するが、この資金を巡って主人公たちが絡むシーンがある。

最終的に彼らの選択した行動が、ポンペイウスとカエサルの戦いに影響を与えたという形で、主人公たちの話が歴史的事件へどのように影響を与えているのか、確認するのもいいだろう。

その他、前編ラストのカエサル暗殺は、主人公の一人ヴォレヌスの話が関わり、これまでの伏線がつながって大きな流れになっているので、どのような結果になるのかぜひご堪能いただければと思う。

歴史の陰に隠れがちな女性たちの活躍

ドラマ「ROME」がもつ魅力の3つ目は、女性たちが歴史的事件に対し、積極的に関わっていることだろう。

このドラマの陰の主人公といってもいい登場人物に、カエサルの姪でオクタウィアヌス(後の初代皇帝アウグストゥス)の母アティアがいる。

アティアの映像
アティア
ドラマ「ROME」 より

私的にはオクタウィアヌスの母、という認識しかなく、オクタウィアヌスがカエサルの名を継ぐことを決めた時、心配のあまり反対をした子供思いのお母さん程度にしか思っていなかった。

しかしこのドラマでのアティアは、時の権力者カエサルとの血縁があり、カエサルにいる周りの人間(アントニウスなど)に積極的に働きかける女性という役回りになっている。

また、カエサルの愛人であり、ブルトゥスの母でもあるセルウィリアも、家名を背負って終始政治への積極的な関与を見せる、陰謀家としての一面もある。

セルウィリアの映像
セルウィリア
ドラマ「ROME」 より

古代ローマでは男性の権限が大きく、女性は歴史の表舞台に登場しないこともあり、映像作品としては(見栄え的にも映える)クレオパトラ以外の女性にあまり脚光があたることはなかった気がする。

しかし実際は上流階級、特に政治的なつながりや家の繁栄を保障するにあたり、ドラマのような積極的な姿勢をみせたのではないかと、「ROME」を観たあとでは思わずにはいられなくなるのだ。

古代ローマの宗教観の描き方

私がドラマ「ROME」で感心したことの一つが、多神教世界だった古代ローマの宗教観の描き方だ。

歴史ものでは、歴史的事件を追っていくあまり、会戦などのド派手な戦闘シーンや政治陰謀劇で権力者たちが覇を競い合っていることがおおく、宗教観を丁寧に描くドラマをほとんど観たことがない。
これは日本の大河ドラマにも言えることで、近代(もっというと現代)以降の価値観に準拠したドラマのために、神への関わりが軽視される傾向があると思う。

その点ドラマ「ROME」では、登場人物たち一人ひとりが、必ずと言っていいほど神の名を口にし、心のなかで祈りを捧げている。
私が確認しただけでも、2~30は神の名が上がっていたような気がする。
これは古代世界に生きる人々にとって、神の存在がより身近に感じていることの現れだった証だろう。
神は人間の守護神であり、神の意志に反した行動を取れば、罰が下る(日本的にいえばバチが当たる)と本気で信じていたはずだ。

宗教観で印象的なシーンがある。

ある事情からヴォレヌスが身をやつし、裏社会に生きる決断をしたときのこと。
彼は自暴自棄からか、コンコルディアという融和の女神の像を振り回し、破壊するのだ。

融和の女神コンコルディアの像を持つヴォレヌスの映像
融和の女神コンコルディアの像を持つヴォレヌス
ドラマ「ROME」 より

このシーンがなぜ印象に残っているのか。
実は堅物ヴォレヌスは神に対しても信心深く、決して冒涜をする人物ではない。
それなのに、彼は神の像を壊さずにはいられなかった。

この心理描写を、宗教観を使ってしっかりと再現している点(そしてそれを視聴者にこれまでの流れで理解させることができている点)に、私は大きな衝撃をうけたのだった。

また、古代ローマで数少ない一神教の一つ、ユダヤ教との関わりも、登場人物にユダヤ人を出すことでしっかりと描写されている。
彼の人生にも衝撃的なラストが待っているので、このことを念頭において確認すると、感慨深いものがあるだろう。

ドラマ「ROME」鑑賞への注意点

ここまで私なりのドラマ「ROME」の見どころを4点紹介した。
しかし「ROME」を観るにあたって心得ておかないと、期待はずれのこともある。
今度はドラマ「ROME」を観る上での注意点を3点ほど挙げてみよう。

史実との相違

まず1点目は、ドラマゆえの性質からくる、史実との相違点があること。

この人物はこの時ここにいた、とか、この地点で死んでいるはずだ、などということも結構ある。
例えばオクタウィアヌスはカエサル暗殺地点では、ローマ市にいなかったはずなのに、ドラマでは普通にローマで暮らしている、といったことだ。

もちろん歴史の決定的なできことは史実通りに再現されているので、パラドックスが起きることはないのだが、ローマの歴史に詳しい人が細かく見れば、ツッコミどころも散見される。

私はドラマと割り切って観ることができるので、どちらかというとドラマの中で再現された説(カエサル暗殺時に、自分の醜さを隠すためマントで身を隠そうとしたカエサルなど)にニヤニヤするだけだが、史実を追いかけたい人が見れば、文句の付け所は満載なのかもしれない。

会戦シーンの省略

2点目。
ドラマ「ROME」はあくまで政治陰謀劇の要素が強いので、歴史スペクタクル群像劇といった要素はどちらかというと少ない。
それを色濃く象徴するのが、大きな会戦シーンの省略描写。

戦史好きなら、

  • ファルサルスの戦い
  • タプススの戦い
  • アクティウムの戦い

など、どのように描かれるのが気になると思うが、実際のシーンは1分もない(なんなら結果だけの)のがほとんどだ。
例外はフィリッピの戦い(ブルトゥス・カッシウス軍 VS アントニウス・オクタウィアヌス軍)で、しっかりと映像化されていたが、その他はすぐに終わることが多かった。

あなたがもし会戦シーンを見たいと思うなら、ザ・ローマ 帝国の興亡 の2話目にある「シーザー」をおすすめしたい。
ガリア最終決戦の「アレシアの戦い」や「ファルサルスの戦い」をしっかりと再現、映像化されている。

Hなシーンの多さ

最後に3点目。

これはドラマ「ROME」の魅力と表裏一体の関係にあるといっても過言ではない性の描写シーン。
性の倫理観が奔放な共和政末期の世相を繁栄してか、「ROME」ではHシーンが圧倒的に多い。

これはこれで作品としても良い味付けになっているのだが、問題は子供のいる家庭などで鑑賞する場合だろう。

突然背後からモニターを覗かれることはもとより、Bluetoothヘッドホンなどをパソコンとペアリングしてこっそりと聞いている場合も、何かの事故でHシーンの声がダダ漏れになった場合、目も当てられないことになりそうだ。

うちは性教育を一緒にしているので大丈夫
子供に観られても問題ない

などと豪語できる環境にない場合、十分に注意するか子どもたちが寝静まったタイミングを見計らって観ることをおすすめする。

今回のまとめ

それではドラマ「ROME」の見どころについて、おさらいしよう。

  • 主人公二人は歴史的な有名人ではないが、ガリア戦記にも記述されている実在の人物
  • あえて権力に遠い人物を主人公にすることで、当時の庶民の生活がうまく描写されている
  • 歴史の陰に隠れた女性にもスポットがあたった構成
  • 多神教世界に生きた気にさせる圧倒的宗教観の表現
  • ただし史実の相違や戦シーンの少なさには目をつむること。子供のいる家庭は要注意

2020年1月現在、今から15年も前に作られたドラマ「ROME」。
そのスケール感や圧倒的こだわりは、今なお色褪せることがないと言っても過言ではないと思う。

もしあなたがもう少しドラマを深く味わいたいなら、私のブログで時代背景を予習しておいてもいいかも知れない。

ドラマはユリウス・カエサルⅤ ―ガリア属州総督就任からルビコン川を渡るまで―の記事から始まり、オクタウィアヌスⅠ ―少年時代と大伯父カエサルとの関係―からオクタウィアヌスⅨ ―アクティウムの海戦~アントニウス、クレオパトラの死まで―をカバーする内容となっているので、ざっくりと通読するだけでも、より内容がわかるはずだ。

また、2020年1月現在ならAmazon Prime Video で前・後編22話視聴可能なので一気に見るか、DVDやBlu-rayを購入していつでも観れるようにしておくのもいいだろう。
コンプリートBOXなら、特典映像もついているのでオススメだ。