二千年前の建物でも崩れない古代ローマの建築資材、ローマン・コンクリートとは

2000年の耐久度を誇るローマン・コンクリート

現代では当たり前のように建築現場で使われているコンクリート。
家の基礎にも使われているため、あなたにも馴染み深い建築資材だろう。

現在のコンクリートは1,800年代に開発されたものである。
しかし2,000年以上も前、すでに古代ローマで製法の違うコンクリートが作られ使用されていたのだ。
それも現代のコンクリートにくらべ倍以上の強度を誇っていたのだから驚く。

しかし古代ローマで使用されていたコンクリート、ローマン・コンクリートは、残念ながらローマ帝国滅亡とともに製法が失われてしまった。

ではローマン・コンクリートとはどのようなものだったのだろうか。

そこで、ローマ建築の多くに使われていたローマン・コンクリートについて、現代のコンクリートと比較しながらどのようなものだったかを明らかにしてみよう。

ローマン・コンクリートの材料と製法

漫画プリニウス(ヤマザキマリ、とり・みき共著) の主人公、実在の古代ローマ博物学者、ガイウス・プリニウス・セクンドゥス。
プリニウスの著書、『Naturalis Historia(博物誌)』によると、ローマン・コンクリートは、

  • 火山灰
  • 石灰
  • 海水

を混ぜてモルタルを作り、骨材となる火山岩が入った型枠内に流し込んだとされている。
火山灰、石灰、海水が混ざると結合能力を持つ化合物が生成される、いわゆる『ポゾラン反応』が発生し、コンクリートができあがるらしい。

ローマン・コンクリートの強度と寿命

上記製法で作られたローマン・コンクリートは、現代のコンクリートに比べて倍以上の強度があった
それは材料の中にある火山灰と海水が原因である。

現代のコンクリートだと、化学反応が起きるとひび割れがおこり、コンクリートの強度が落ちるため、化学反応が起こらないように構成されている。
だが、構造物が長くなるほどヒビが入りやすくなる
また、海水にさらされると骨組みである鉄骨の腐食が進み、周りのコンクリートまで駄目になってしまう。

しかしローマン・コンクリートはこの海水が火山灰の成分と混ぜることで『腐食』させ、化学反応を人為的におこす
するとコンクリートの穴を埋めるようにミネラルが成長し、逆に強度が増していく。
また、成長したミネラルの連晶によって埋められた穴のおかげでヒビが入りにくい。
ローマン・コンクリートは、皮肉にも現代コンクリートが避けた海水との腐食によって、強度を手に入れたのだ。

ナポリにあるローマ時代の遺跡は、海水にさらされているにもかかわらず、実に2,000年近くも形をとどめている。現代のコンクリートは50年から、せいぜい100年程度しかもたないので、これは驚異的な寿命だといえよう。

コンクリートを使った施工法

型枠の中に流し込み、固めて施工するのは現代のコンクリートと同じだ。
ローマン・コンクリートが現代のコンクリートと違うのは、骨材をあらかじめモルタルに混ぜてから流し込むのではなく、骨材を型枠に入れてからモルタルを流し込む、という方法で施工すること。

また、現代では主に木枠の中に流し込んでコンクリートを固めるが、ローマン・コンクリートの型枠は木枠のほかに、石やレンガを使用する場合もあった。
この場合、型枠として使った素材は取り外されることなく、そのまま壁の装飾として使用されている。

レンガを使ったコンクリート施工の例(出典:Wikiwand)
レンガを使ったコンクリート施工の例(出典:Wikiwand

ローマン・コンクリートでできた建造物

古代ローマでは、ありとあらゆる建造物につかわれてたローマン・コンクリート。
現在でも形をとどめているものを一部紹介しよう。

パンテオン

ローマン・コンクリートを使用した巨大建造物といえば、ローマ市にあるパンテオンが有名だ。

  1. 内径43m、天窓の直径9mという大きさ
  2. 一度火事で消失してはいるが、ハドリアヌス帝時代に再建されているため、比較的古い
  3. ほぼ完全な形で残っている保存性

以上がほかの建造物より頭一つ抜き出た理由だろう。

また、パンテオンは6層構造で、上に行くほどコンクリートの材質が軽くなっている。

1層目(基礎)凝灰岩と砕石
2層目(1階部分)凝灰岩と石灰岩の2種の砕石
3層目(2階部分)凝灰岩の砕石とレンガ片
4層目(円蓋下部)レンガ片
5層目(円蓋中部)凝灰岩の砕石とレンガ片
6層目(円蓋上部)凝灰岩の砕石と軽石

コロッセオ

ローマ観光の顔とも言えるコロッセオ。
このコロッセオにもローマン・コンクリートが使われており、約2,000年前の建物とは思えないほど形がしっかりと残っている。

ちなみにコロッセオの外周や内側の一部がなくなっているのは、崩壊したからではなく後世の建築物に使われてしまったためである。
あのバチカン市にあるサン・ピエトロ大聖堂にも建築資材としてコロッセオのローマン・コンクリートが切り出されて使用されている。

コロッセオについてはコロッセオ ―意外な歴史やエレベーターまで存在した円形闘技場の構造について―で詳しく説明しているので、興味があれば一読いただけると嬉しい。

古代ローマ市民が熱狂したコロッセオ コロッセオ ―意外な歴史やエレベーターまで存在した円形闘技場の構造について―

今回のまとめ

ローマン・コンクリートについて、今一度おさらいする。

  • ローマン・コンクリートの材料は、火山灰・石灰・海水
  • 海水と火山灰の『腐食』が強度と寿命を高めている
  • 現代のコンクリートは100年程度の寿命だが、ローマン・コンクリートは2,000年以上前の建築物が今も形をとどめている
  • ローマン・コンクリートの施工には、木枠のほかに石やレンガが使われていた

このようにメリットが多いローマン・コンクリートの製法や建築法がなぜ失われてしまったのか、謎はつきない。

しかし、インフラ整備が進んだ現代に、ぜひともローマン・コンクリートを復活させ、活躍させてほしいと願う。

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