コロッセオ ―意外な歴史やエレベーターまで存在した円形闘技場の構造について―

古代ローマ市民が熱狂したコロッセオ

コロッセオ。
ローマ旅行のパンフレットに必ず外観が掲載されているので、あなたも一度は目にしたことがあるだろう。

古代ローマの建造物として1、2を争う有名な建物だが、実はカエサルやネロが生きている時は存在しなかったのだ。

ではこのコロッセオ、

  • いつ、
  • 何の目的で、
  • どのような構造で、
  • 闘技場で何が催されていたか

をあなたはご存知だろうか。

そこで、新婚旅行にまでイタリアを選んだ古代ローマ好きの私が、コロッセオについて説明したいと思う。
あなたの知識に新たな発見があれば幸いだ。

コロッセオはネロの死後に建設された

前述の通り、コロッセオはローマの共和制時代には存在しなかった。
ではコロッセオはいつ建てられたのか。

実は暴君として有名な5代目の皇帝ネロが国家の敵として断罪・殺害された後、内乱を経てローマ皇帝の座についたウェスパシアヌス帝が建てたものである。う。

実はこの時のローマは、ネロの度重なる浪費で国家財政が傾いたことに加え、ローマ市に起こった大火事、いわゆるローマ大火の復興や内乱のために国費を節約する必要があった

ではなぜ苦しい台所事情の中で、闘技場を新しく建てたのだろうか。
その理由は次の2点。

  1. 前述のとおり、ローマ大火や内乱ですさんだローマ市民の不安を和らげる必要があったため
  2. 剣闘試合の需要が大きくなっているにもかかわらず、専用の闘技場は収容人数が少なく、ほかの施設で興行を行うと仮設の観客席を用意しなければならなかったため

以上の理由から、ネロの作った人工池の跡地にコロッセオ(ラテン語ではコロッセウム)が建てられることになった。

ただし、ウェスパシアヌス帝はコロッセオの完成を目にせず死んだ。
コロッセオはウェスパシアヌスの子、ティトゥス帝の時代に完成したのである。

コロッセオの構造

コロッセオの大きさ

コロッセオは、長径(膨らんでいる方の直径)が188m、短径(潰れている方の直径)が156mの楕円形になっている。
これは陸上トラックのない約40,000人収容のサッカースタジアムより一回り小さい程度の大きさだと想像すると、分かりやすいだろう。

私は常々、

コロッセオ(円形闘技場)は古代ローマのサッカースタジアム

と考えているので、コロッセオの大きさを現代のサッカースタジアムと比べてみたいと思う。
ちなみに世界のサッカースタジアムの規模は下記の通り。

カンプノウ(FCバルセロナ)

長径:230m
短径:190m
収容人数:98,000人

サン・シーロ(レアル・マドリードCF)

長径:200m
短径:170m
収容人数:67,000人

アリアンツ・アレーナ(FCバイエルン・ミュンヘン)

長径:250m
短径:200m
収容人数:75,000人

スタディオ・オリンピコ・ディ・ローマ(ASローマ)

長径:311m
短径:244m
収容人数:70,000人

パナソニックスタジアム吹田(ガンバ大阪)

長辺:200m
短辺:170m
収容人数:40,000人

大きさや収容人数を比べても、コロッセオはサッカースタジアムとよく似ていることがわかるだろう。

コロッセオの観客席

コロッセオの観客席は4層構造になっており、その高さは50mにも及んだ。
収容人数は約50,000人にも達するという。

観客の席は身分によって決まる

コロッセオの観客席は、各階層で入場できる身分が決まっていた。

一階層目:元老院議員のための席
二階層目:騎士階級の席
三階層目:裕福なローマ市民の席
四階層目:一般のローマ市民と女性のための席

また上記とは別に、VIPである皇帝用の席も用意されている。

観客席の工夫

観客席には、様々な工夫がされている。

まず第一に、直射日光を避ける工夫。
どの席も、20分以上陽の光を浴び続けることがなかったという。
特に皇帝席は全く陽が差し込まないようになっていた。

第二に最上階の席には、日光を避けるための天幕が設置できるポールがあった。
これにより、最も陽の影響を受ける最上階でも心地よい環境を整えている。

第三に各階層でアーチの様式が違った。

一階層目:ドリス式
二階層目:イオニア式
三階層目:コリント式

さらにコロッセオに入場できるアーチ(入り口)が80箇所もあり、そのうち皇帝や剣闘士などが使用する以外の76箇所のゲートには番号が振られていた。

これはコロッセオに入場する際、入場券のようなものがあり、その券にゲート番号を記載することで、迷わなくすることが狙いだと考えられている。

コロッセオの主な建築素材はローマン・コンクリート

コロッセオの主な建築素材は、現代とは製法の違う火山灰と海水を混ぜて作られたコンクリート、いわゆるローマンコンクリートが使用されていた。
当然、鉄筋は一切使われていない。

多少の補修はあったものの、建設から2,000年経った今でも崩れることなく残っているのは、基本的にコロッセオの強度が高かったに他ならない。

コロッセオの強度が高かった理由は2点ある。

  1. コロッセオが円筒形で負荷がかたよらず、安定した構造である
  2. 素材として使われているローマンコンクリートの耐久性が並外れて高い

ちなみに現存するコロッセオの外周部が半分ほどなくなっているのは崩れたのではなく、後世の建築材料としてコロッセオから切り出されたからである。
バチカンにあるサン・ピエトロ大聖堂にもコロッセオの一部が使われているのだ。

ローマン・コンクリートがどのような建築素材だったかについては、ローマン・コンクリート ―二千年経っても崩れない古代ローマの建築技術―に書いているので、合わせて読んでいただければ幸いだ。

2000年の耐久度を誇るローマン・コンクリート ローマン・コンクリート ―二千年経っても崩れない古代ローマの建築技術―

コロッセオの地下

現在のコロッセオではむき出しになっている地下部分は、闘技場として機能していた当時は地上部分に隠されて見えなかった。

この地下部分は、隣に併設されていた剣闘士の養成所と地下通路で繋がっており、剣闘試合が開催される時は、彼らはこの通路を使ってコロッセオに入場した。

コロッセオには猛獣用のエレベーターがあった

実はコロッセオには、猛獣を地上階に運ぶためのエレベーターがあったのだ。
もちろん現在のような電動ではなく、人力で昇降させていた。
熊を運ぶことができるよう、300kgまで荷重に耐えられたという。

2015年、コロッセオの人力エレベーターが補修されたことは、ニュースにもなっている。

なお、コロッセオのエレベーターを再現する試みが、こちらの記事で紹介されているので、興味があればどうぞ。

参考 猛獣とグラディエーターの決闘を可能にしていた装置がコロッセオで再現GIGAZINE

コロッセオの構造がわかる動画

ここまで説明してきたコロッセオの構造を、コンパクトにしてわかりやすくまとめた動画があるので、ご覧いただこう。
BGMは微妙なので、ミュートで見ることをおすすめしたい。

コロッセオで催されてたイベント

コロッセオで開催されるイベントは主に

  • 剣闘士同士の試合
  • 剣闘士と猛獣の試合

である。

剣闘士とは、簡単にいえば見世物として闘技会で戦うために訓練された人間のことで、戦争の捕虜などで奴隷となったものが主に剣奴として鍛えられた。

剣闘士についての言及は長くなるので、これ以上は記載しないが、コロッセオの落成記念に催されたイベントでは、1,000頭以上の猛獣が剣闘士との試合で殺され、また100人以上の剣闘士が命を落としたという。

コロッセオに水を引いて、摸擬海戦(ナウマキア)も催された

また驚くことに、コロッセオが建設された初期の頃には、上水道の管をコロッセオ内に引いて水を溜め、船を浮かべた摸擬海戦(ナウマキア)も行われた。

摸擬海戦自体も驚くが、船を浮かべるほど水を引くことができた、当時のローマのインフラ整備がいかに高度だったか、この事実からもよく分かる。

なお模擬海戦についてはにも詳しく書いているので、参考にしていただきたい。

ローマの超巨大イベント模擬海戦(ナウマキア) 模擬海戦(ナウマキア)―カエサルやアウグストゥスも開催した超巨大イベント―

今回のまとめ

コロッセオについて、今一度まとめてみよう。

  • ウェスパシアヌス帝の時代に建設が始まり、ティトゥス帝の代で落成した
  • 大きさは40,000人収容のサッカースタジアムより一回り小さい程度
  • 主な建築資材はローマンコンクリート
  • 使いやすいように様々な工夫を施されていた
  • 剣闘士の試合だけでなく、摸擬海戦も行われた

冒頭で記載したローマ旅行では、コロッセオの入場券を買ったにもかかわらず、時間外で入場できなかったという苦い経験がある。

もしあなたがローマに行くことがあれば、これらに思いを巡らせて、ぜひ私の代わりにコロッセオを堪能してほしい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA