アウグストゥス ―ローマを帝政へと導いた初代皇帝―

アウグストゥス ローマを帝政に導いた初代皇帝

アウグストゥス。
あなたが高校で世界史や、ローマ帝国の歴史番組などで一度は耳にしたことがある名前ではないだろうか。

アウグストゥスは、ローマ帝国初の皇帝であり、共和政ローマから新しい統治機構へと変化させ、体制を確立した人物だ。
初代であるにもかかわらず、その統治期間は41年で、歴代ローマ皇帝のなかでもダントツの長さを誇っている。

しかしアウグストゥスは生まれたときから皇帝だったわけではない。
それどころか名門出身の貴族でもなく、地方出身の騎士階級(政治を行う元老院階級よりひとつ下の身分)だったのである。

そのアウグストゥスが、どのようにしてローマ唯一の盟主となったのか。
また覇権を確立したあと、どのようにローマ帝国を統治したのだろうか。

この記事では、アウグストゥスの生涯などをまとめたので、ご覧いただければ幸いだ。

アウグストゥス以前 ―オクタウィアヌスの時代―

アウグストゥスとは元老院から与えられた尊称であり、生まれた時の名は「ガイウス・オクタウィウス・トゥリヌス」といった。
そして暗殺されたカエサルの養子となって以降、「オクタウィアヌス」へと変化する。

ここではアウグストゥスになる以前、ガイウス少年だったころや、カエサルの名を継ぎ権力闘争へと身を委ねたオクタウィアヌス時代を通じて、いかにローマの頂点へと上りつめたのかを見ていこう。

オクタウィアヌスⅠ 少年時代

オクタウィアヌス カエサルの遺志を継ぐ青年

共和政末期、のちにオクタウィアヌスとなるガイウス・オクタウィウスは、イタリアの地方都市に生を受ける。
ガイウス少年の家は、資産家で裕福ではあったが、ローマの名門貴族ではなく、騎士階級でしかなかった。

しかしガイウス少年の祖母の兄である大伯父は、のちの独裁官としてローマに君臨する、あのユリウス・カエサルだったのだ。

オクタウィアヌス カエサルの遺志を継ぐ青年 オクタウィアヌスⅠ ―少年時代と大伯父カエサルとの関係―

オクタウィアヌスⅡ 「カエサル」継承

オクタウィアヌス カエサルの遺志を継ぐ青年

アポッロニア滞在中、かつてガイウス少年だったオクタウィウスは、カエサルが暗殺されたという衝撃の知らせを受けた。
オクタウィウスはローマに帰還することを決める。

そしてアドリア海を渡った彼に、さらなる知らせが舞い込んだ。
それはカエサルが遺言でオクタウィウスを養子にするというもの。
オクタウィウスは悩んだ末に、「カエサル」の名を受け継ぐことを決意。
それはオクタウィアヌス誕生の瞬間でもあった。

オクタウィアヌス カエサルの遺志を継ぐ青年 オクタウィアヌスⅡ ―アドリア海渡航からアントニウスとの対面まで―

オクタウィアヌスⅢ ムティナの戦い

オクタウィアヌス カエサルの遺志を継ぐ青年

ローマに戻ったオクタウィアヌスは、カエサルの養子となった自分の正当性を主張し、それを認めないアントニウスと対立。
アントニウスへのネガティブキャンペーンを展開した。

一方のアントニウスは、執政官でありながら権力の拠り所となる軍隊を得るべく行動を開始。
彼が狙ったのは、赴任予定だったマケドニア属州の軍団だった。

オクタウィアヌス カエサルの遺志を継ぐ青年 オクタウィアヌスⅢ ―第一次ローマ進軍からムティナの戦いまで―

オクタウィアヌスⅣ フィリッピの戦い

オクタウィアヌス カエサルの遺志を継ぐ青年

ムティナの戦いに破れたアントニウスだが、逃れた先のガリアでレピドゥスたち属州総督と合流し、巨大派閥アントニウス派を形成する。

一方アントニウスによって、カエサル暗殺者の一人デキムス・ブルトゥスが破れ殺害されたのを尻目に、オクタウィアヌスはローマで執政官へと就任した。
このとき、オクタウィアヌスには「ある狙い」を胸に秘めていた。

オクタウィアヌス カエサルの遺志を継ぐ青年 オクタウィアヌスⅣ ―国家再建三人委員会結成(第2回三頭政治)から、フィリッピの戦いまで―

オクタウィアヌスⅤ ペルージア戦争

オクタウィアヌス カエサルの遺志を継ぐ青年

共和政擁護派の打倒とカエサル暗殺の復讐を果たすため、「国家再建三人委員会」という形で手を組んだオクタウィアヌスとアントニウス。
彼らはフィリッピの戦いでマルクス・ブルトゥス、カッシウスら共和政の強力な擁護者であり、カエサル暗殺の首謀者でもあった者たちを、力でねじ伏せることができた。

しかしこの戦いは、ほぼアントニウスの働きによるものであり、満足な結果を目に見える形で出すことができなかったオクタウィアヌスには、イタリア本国での重い仕事が待っていたのである。

オクタウィアヌス カエサルの遺志を継ぐ青年 オクタウィアヌスⅤ ―フィリッピ後の協定からペルシア戦争まで―

オクタウィアヌスⅥ ブルンディシウム協定など

オクタウィアヌス カエサルの遺志を継ぐ青年

退役兵の年金となる土地の問題で、兵と地方都市の両方から出た不満は、ついに暴動となった。
その混乱を利用して、アントニウスの弟ルキウス、妻フルウィアが決起。

最終的にペルージアへと立てこもった彼らを降伏に追い込み、混乱を沈めたオクタウィアヌスだが、アントニウス派だったガリア総督の死をいいことに、まるごとガリア全域の軍を勝手に引き継いでしまったのである。

これに怒ったアントニウスはブルンディシウムを包囲。
アントニウスとオクタウィアヌス、一触即発の事態となった。

オクタウィアヌス カエサルの遺志を継ぐ青年 オクタウィアヌスⅥ ―ブルンディシウム協定、ミセヌム協定、シチリア戦争開始―

オクタウィアヌスⅦ シチリア戦争終結

オクタウィアヌス カエサルの遺志を継ぐ青年

ブルンディシウム協定やミセヌム協定によって、束の間の平和が訪れたローマ。
しかしセクストゥス・ポンペイウスの部下の裏切りにより、オクタウィアヌスは目の上のたんこぶだったシチリア討伐を決意する。

しかしセクストゥスとの戦いで、艦隊戦の経験が少ないオクタウィアヌスは大敗をしてしまう。
危機感をつのらせた彼は、アントニウスに助けを求めるため、部下のマエケナスを派遣。
しかし2度も会談の約束を破られたアントニウスは、堪忍袋の緒が切れる寸前だったのだ。

オクタウィアヌス カエサルの遺志を継ぐ青年 オクタウィアヌスⅦ ―タレントゥム協定からシチリア戦争終結まで―

オクタウィアヌスⅧ アントニウス弾劾

オクタウィアヌス カエサルの遺志を継ぐ青年

国家再建三人委員会の体制を延長させることに成功したオクタウィアヌスは、アントニウス、レピドゥスの協力や、アグリッパの艦隊強化が実ったおかげで、今度こそセクストゥスを倒すことができた。

その頃東方ではアントニウスが、パルティア遠征を計画するも失敗に終わってしまう。

ローマの西方に対抗できるものがいなくなったオクタウィアヌスは、ローマ唯一の盟主となる事を計画。
そしてライバルであるアントニウスへの非難を開始する。

オクタウィアヌス カエサルの遺志を継ぐ青年 オクタウィアヌスⅧ ―パルティア遠征失敗~アントニウス弾劾まで―

オクタウィアヌスⅨ アクティウムの海戦

オクタウィアヌス カエサルの遺志を継ぐ青年

オクタウィアヌスとの関係が悪化した事を受け、アントニウスは計画していたパルティア遠征のための軍をギリシアへと向け、来たるべき戦に備えた。

一方オクタウィアヌスは、アントニウスから離反した将軍によってもたらされた情報により、アントニウスの遺言状を暴露したのである。

そしてついにエジプトに対して宣戦を布告したオクタウィアヌスは、東方へと軍を向ける。
アントニウスとの最終決戦をするために。

オクタウィアヌス カエサルの遺志を継ぐ青年 オクタウィアヌスⅨ ―アクティウムの海戦~アントニウス、クレオパトラの死まで―

アウグストゥス以降 ―第一人者(プリンケプス)として―

アントニウスとの決戦を制したオクタウィアヌスは、「アウグストゥス」という尊称を元老院から受け取ることになった。

そしてアウグストゥスは、カエサルから受け継いだローマの統治を開始する。
それはこれまでの「共和政」という体制を表面的に継続しつつ、一人の統治者のもとで大帝国となった国家ローマを運営するという、禅問答のような難事業への挑戦だった。

アウグストゥスⅠ 皇帝の権力と権威

アウグストゥス ローマを帝政に導いた初代皇帝

ローマ帝国の覇者となったアウグストゥスが、統治の上で欠かすことのできないものが、法的な根拠を持つ権限の確保と権力の基盤である。

アウグストゥスはたった一人の指導のもとで行う統治のための権力を、どのように手に入れたのか。
またアウグストゥスは、できるだけ背後にある権力を見せることなく統治するために、どのような手段を用いたのか。

この記事では、ローマ皇帝となったアウグストゥスの、権力と権威について説明する。

アウグストゥス ローマを帝政に導いた初代皇帝 アウグストゥスⅠ ―ローマ皇帝の権力確立と権威について―

アウグストゥスⅡ 安全保障

アウグストゥス ローマを帝政に導いた初代皇帝

アウグストゥスは、手に入れた権力を使い、どのようにローマ帝国を統治したのだろうか。

帝国の指導者として欠かすことができないもの。
それが帝国の民を戦乱から守ることと、食の安定した供給である。

この記事では、国民を外敵と内乱から守るために行った、ローマ軍の改革と具体的な国の守り方(安全保障)について、見ていくことにする。

アウグストゥス ローマを帝政に導いた初代皇帝 アウグストゥスⅡ ―ローマ軍と安全保障について―

アウグストゥスⅢ 帝国運営

アウグストゥス ローマを帝政に導いた初代皇帝

共和政の統治体制で歪みがでていたところを修繕する。
アウグストゥスにとって、帝国運営の効率化と信頼性の向上は大きな課題だった。

彼はこの問題をどのように解決したのだろうか。
この記事では、今まで政治を先導していた元老院の見直しと、首都ローマやその他の統治体制見直しについて、見ていくことにする。

アウグストゥス ローマを帝政に導いた初代皇帝 アウグストゥスⅢ ―帝国運営の効率化と信頼性の向上―

アウグストゥスⅣ 首都再開発

アウグストゥス ローマを帝政に導いた初代皇帝

人口が爆発的に増えた結果、今まで無計画に進行していた首都ローマの町並みは、あまりに雑然としてしまった。

世界帝国の首都として、ふさわしい街づくりを実現する――。

アウグストゥスは、カエサルの暗殺によって中断されていた首都の再開発に着手した。

アウグストゥス ローマを帝政に導いた初代皇帝 アウグストゥスⅣ ―首都ローマの再開発―

アウグストゥスⅤ 古き良き伝統の再生

アウグストゥス ローマを帝政に導いた初代皇帝

共和政末期、富の流入によりローマ上流階級は質実剛健からは程遠い、自由奔放な暮らしぶりを謳歌していた。

地方都市出身のアウグストゥスにとって、ローマの状況は退廃的にうつり、性風俗は乱れていると考えただろう。

そこでアウグストゥスは、「古き良き」ローマの伝統や、神々への敬虔を再生するべく、手を打つことにした。

アウグストゥス ローマを帝政に導いた初代皇帝 アウグストゥスⅤ ―古き良きローマの復活と再生―

アウグストゥスⅥ 市民対策

アウグストゥス ローマを帝政に導いた初代皇帝

アウグストゥスが単独の支配者となった以上、市民への配慮もまた彼の責務となった。
その配慮の最たるものが、安定した食料の確保と娯楽の提供である。

彼は上記2つをどのように行ったのだろうか。

アウグストゥス ローマを帝政に導いた初代皇帝 アウグストゥスⅥ ―ローマ市民たちへの配慮―

アウグストゥスⅦ 私生活と人物像

アウグストゥス ローマを帝政に導いた初代皇帝

ローマを帝政へと導き、様々な改革を行ってきたアウグストゥス。
ではアウグストゥス自身はどんな人物だったのだろうか。

今回はアウグストゥス個人の人物像に迫る。

アウグストゥス ローマを帝政に導いた初代皇帝 アウグストゥスⅦ ―私生活と人物像―

アウグストゥスⅧ 後継者

アウグストゥス ローマを帝政に導いた初代皇帝

アウグストゥスにとっての最後の課題、それは「自分が死んでもローマの帝政を継続させ、ユリウス氏を繁栄させる」ことだった。
そのために必要なのは、適切な後継者を残すこと。

アウグストゥスはこの後継者問題に、どのように立ち向かったのだろうか。

アウグストゥス ローマを帝政に導いた初代皇帝 アウグストゥスⅧ ―後継者と帝政の維持―

アウグストゥスが登場する作品

映画・ドラマ

ROME

プッロ(左)とヴォレヌス(右)の映像
主人公の二人 プッロ(左)とヴォレヌス(右)
ドラマ「ROME」より

2005年、アメリカのケーブルテレビ局HBOとイギリス国営放送BBCが共同で製作したテレビドラマシリーズ。

この作品で、アウグストゥスは前・後編22話すべてに登場する。
といっても前編12話は政治の表舞台に立つ前、この記事でいえばオクタウィアヌスⅠ ―少年時代と大伯父カエサルとの関係―にあたるオクタウィウス時代。
カエサルの後継者として名乗りを上げるオクタウィアヌス時代は、後編の2話目から(演じる人物も入れ替わる)。
後編の最終話で内乱が終結するため、この記事でいえばオクタウィアヌスⅨ ―アクティウムの海戦~アントニウス、クレオパトラの死まで―で終了する構成だ。

オクタウィウス時代を描く映像作品は珍しいため、どのように描かれているのか、確認するのも面白いかも知れない。
もちろん彼の友人、アグリッパやマエケナスも登場するので、この二人に驚異のあるかたもご覧いただくといいだろう。

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もし作品の見どころが知りたいなら、ROME ―古代ローマを舞台にしたHBO製作の本格的歴史ドラマ―もご参考いただければと思う。

HBO製作TVドラマ ROME ROME ―古代ローマを舞台にしたHBO製作の本格的歴史ドラマ―

マンガ・小説

AUGUSTUS

変則的一人称といえる当事者の手紙のやり取りや手記で物語が進む、書簡小説(とでも名付けようか)。もちろん書簡は著者の完全創作。

三部構成で、
第一部はカエサルが暗殺されてから内乱が終了するまで。アグリッパやマエケナスを中心とした、戦争当事者のやり取りで、戦記物としても読むことができる。

第二部は一転して、アウグストゥスの家族にスポットを当てた物語。ユリアの手記を中心に、アウグストゥスがどのように帝国を治め、引き継ぐかに心血を注いだかが描かれる。と同時にアウグストゥスがローマのために家族をいわば『帝国の生贄』として捧げた非常さを、ユリアの目を通して描写される。


一部と二部にはアウグストゥス自身の手紙や手記などはなく、周りから見たアウグストゥスの行動や様子が描かれるため、アウグストゥス自身の内面は分からない。ところがラストの三部、アウグストゥス最後の10日間を、友への手紙という形で彼自身の執筆による回顧録が描かれることにより、これまで描かれなかったアウグストゥスの思いが明かされる。


この三部で、一部や二部に(周囲の目を通して読者に)抱かせた印象をガラリと変える手法は見事。特に三部の途中にある『アウグストゥスの業績録』の引用が、この小説を最後まで読んでみることで、今までの無味乾燥な文章からガラリと印象が変わったのが、この小説における私的な最大のハイライトだった。

もしあなたが物語でアウグストゥスを知りたいと思うなら、本作を手にとって損はないだろう。

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